2018年4月6日金曜日

「イメージ」

新聞を取ることをやめ、たまにネットで検索するだけなので次の記事が何面に掲載されたものか分からないが、今朝の朝日新聞に掲載されたらしい。『森友問題、官邸関与は「イメージ」 騒ぐ国会、政策論は』(佐伯啓思・京大名誉教授)との署名記事だ。佐伯氏は経済学者だが、随筆めいたものもよく書いているので時々読んだりしている。今回の記事はかなり長文だが要約すると「野党が森友事件について官邸の関与の疑惑濃厚として騒ぎ、マスコミがそれを大きく扱った結果、隠蔽疑惑として一種の世論を形成している。しかし、現時点で確かなことは、ただ財務省内部での改ざんの事実だけで、官邸の関与を示す証拠は何もない。」

佐伯氏は国会が1か月以上の長きにわたりこの事案に明け暮れ、政策論議がなおざりにされていることを憂いている。氏は専門とする経済分野でも与党寄りの見解を持つわけでもなく、むしろ普段は安倍政策全般について批判的である。であるのにまるでネトウヨが言いそうなことを書き、それを問題に火をつけた朝日新聞が掲載しているのは面白いと言っては不謹慎かもしれぬが、不思議でもある。佐伯氏が言うところは正論であるが、朝日新聞は社運をかけて政権と闘っている、と言われている最中ではないか?

国会における与野党のせめぎあいは兎も角、政権と一メディアの戦いとしては一種の勝利宣言のようにも聞こえてしまう。いくら何でもそれは無いだろう。今話題の映画「ペンタゴン ペーパーズ」でワシントンポストの社主が、それこそ社運を賭けた山場で「報道の自由は国民のためにあるので、統治者のためではない。」と名言を吐いている。朝日新聞社に言わせれば、一連の報道にはたが言うほど社運を賭けてなんかいないかもしれないし、経営面では政府から優遇されている大企業だ。

間違って政権がひっくり返ることなんかになったら却って具合の悪いので、経営サイドが記者にブレーキをかけるなんてことがあるかもしれぬ。テレビ業界ではよく聞く話でもある。幸い野党もだらしないし、適当なところで手を引かねばと考える向きがあっても不思議は無い。それには誰にも反対できない正論を持ち出すのが一番だなんて、日本のクオリティーペーパーにまさかそんな下心は無いことを願う。洋の東西を問わず、マスコミの社主クラスは社会の最上層部に位置するものらしい。穿ち過ぎかもしれぬが、イメージに翻弄されている己を反省しながら、ふと不安感を覚えてしまった。

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