2017年6月21日水曜日

読後感「日本中枢の狂謀」古賀茂明著

著者は司会:古館伊知郎時代の「報道ステーション」コメンテータも務め、降版の際に物議をかもした人物。「I am not ABE」フィリップ提示でも有名になった。通産省キャリア官僚で内閣出向経験もあり、マスコミの内部にも通じているので、世間を見る目も凡俗には及ばない複眼視点を持っているはずである。徹底した現政権批判を中核に据えて、日本社会の問題点抽出を試みている。著者は前回の都知事選で出馬直前まで行ったことも経験している通り、政治的野心もあるので、政治の裏側も知る立場のようだ。民進党(旧民主党)についても問題点を指摘して、かなり辛辣に(早く消滅すべきと)書いている。

内容は著者がこれまでに別の著書やマスコミを通じて発信してきているところを詳細に書き込んでいるようなので、買ってまで読む程ではないかもしれぬ。著者の主張「改革はするが戦争をしない民主主義国家・原発の無い日本」の確立に反対する気持ちは全く無いが、言うべくして容易なものではないだろう。しかし問題点の指摘という意味では、通産官僚であっただけに原子力政策にしろ、産業政策においても素人の見方を超えている。

日常的にぬるま湯状態の社会にどっぷり浸っているので、何となくおかしいと感じてはいても問題がどこにあるかは中々気づきにくいものだ。一例を挙げれば自動車産業なんか、トランプ大統領が何を言おうと日本は世界をリードしていると思っていた。ところが経産省のミスリードで今や世界の趨勢に相当遅れ、トヨタでさえシャープや東芝になる日が近づいていることを改めて知らされた思いだ。外国事情にもよく通じている。

国内的には例の政治問題と絡み、規制緩和論議が喧しいが、産業政策上本当の問題点はどこにあるのか。これも知っているようでもはっきり知らなかったことだ。農業農協改革、医療制度改革等々幾つか指摘しているが、特に改めて思ったのは昔少し関わったエネルギー(原子力)政策である。著者が原子力からの脱却を目指したいのは分る。しかし問題は政官業に亘り巧妙に張り巡らされたネットワークとこれに篭絡されているマスコミであり、その実態が相当赤裸々に描かれている。

問題点の抽出と言う意味ではよく書けているとは思うが、市民連合の立ち上がりを期待する著者の思いはどこまで届くかが問題だろう。


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