2017年3月23日木曜日

価値観の相違

昨夜安倍総理が訪欧から帰国したが、籠池劇場本番前夜のせいかどうかマスコミは相手にしていない感じで、一寸可哀そうなくらいだ。今朝の新聞でも訪欧の成果らしきものは殆ど報じられないに等しい。世界の中心で輝きたい総理としては極めて不本意だろう。しかし総理自身、本気で欧州の首脳、と言ってもメインはドイツのメルケル首相と次期サミット開催国イタリアのパオロ首相だろうが、とアメリカのトランプ大統領の間を取り持てると思って出かけたのだろうか。

昨日ちらりと見たネット情報によれば、アメリカのある精神科医師が「トランプ氏は精神分裂症の可能性がある」と言ったそうだ。その真偽は措くにしても、安倍総理は先月長時間にわたる2度目の会談で、トランプ大統領の基本政策については考えに大いに共感したことになっている。具体的に言えばTPP即時撤退にも何ら異を唱えず、国外ばかりか国内ですら批判の多い移民政策も国内問題を理由に一言も言及していない。

一方欧州の首脳陣は例外なく(あの英国のメイ首相でさえ)トランプ氏の貿易面での保護主義政策と移民政策には真っ向から反対を表明している。訪問先で取ってつけたように「自由貿易の旗を高く掲げ」なんて言ってみても、相手は子供じゃあるまいし安倍さんのお考えに敬意を表します、なんてことになる筈はない。ましてや同じドイツの バーデン=バーデンで同時期に開催された20か国財務相・中央銀行総裁会議はアメリカ代表に引っかき回されて、欧州勢は相当に不満だった筈だ。

その会議には副総理の麻生氏が出席しているのも自明のことで、ここで麻生氏や黒田日銀総裁がアメリカにかみついたとでも報道されればまだ話の辻褄は合うかもしれぬ。二人が逆立ちしてもそんな芸当できるはずもない。己の定見なくして他人価値観を受け止めることはできない話である。仕方がないので、その場その場で相手に合わせたつもりの出まかせばかり言う人間は、結局誰からもリスペクトされないのは明らかだ。

ましてや価値観の違う人間の仲立ちなんぞ出来る筈もない。ましてや現在は価値観多様化の時代、かつて倫理学の時間に学んだ真善美ですら普遍的価値観として通用するかどうか危ないくらいだ。こんな時代に己の力で価値観の相違を埋められると考えたとすれば、政治的センスもさることながら常識を疑わざるを得ない。

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