2016年8月12日金曜日

過去への思い

8月と言えばテレビでは懐メロ特集が放送され、今日は迎え火を焚いて先祖を自宅にお迎えする日。来週月曜には終戦の日がいつものようにやってくる。日本人にはそうであっても、厳密な意味での終戦は9月2日、日本政府代表が敵艦上にて連合軍に対する降伏文書にサインした日だ。当時のソ連が8月15日以降に北方領土を占領したことを憤慨する向きもあろうが、ソ連にもそれなりの理屈はある。今となればこんなことは知らない人の方が多いだろう。

話が逸れてしまったが、今年はリオ・オリンピックのお蔭で世間の関心も外交や戦争問題から遠のいていることは政府関係者にとっても結構なことかもしれない。その上尖閣沖で中国漁船の遭難救助と来るのだから笑いが止まらないかな。

こちらは久し振りに図書館に行って読書をしてきた。例によって100ページ未満の試し読みだ。書名 『忘れ得ぬ満州国』 古海忠之著 なかなか面白いが、流石アマゾンでにも在庫が無い。まもなく事務所をたたむので本は増やさない方が良いから、図書館に通い続けて読むしかないようだ。急に近代史に目覚めたわけでもないが、著者は、終戦まで満州国を実質支配した「二キ三スケ」の一人星野直樹氏一の子分だった古海忠之氏の自伝とも言える。

そもそも星野直樹氏は大蔵官僚で、古海氏も当然ながら大蔵官僚の出身。大学は京都で野球の選手だったそうだ。この人物の経歴が面白い。終戦と同時にソ連軍の捕虜になるが、何故か5年後に中京に引渡されても殺されず、合計18年の刑を終えて1963年池田内閣の時に復員してくる。ソ連では相当つらい目に遭ったようだが、被害者とも言うべき中国で殺されなかったのが不思議でもある。更に、帰国に際して周恩来首相と直接会見する機会が与えられ、帰国したら池田首相に伝えるようメッセージまで託されたようだ。

内容は簡単明瞭、アメリカ一辺倒から脱して本当の独立国になれ。そしてソ連や我が国と国交を回復すべき、そうすればソ連も我が国も再軍備には反対しない。この問題は簡単に解決しないだろうが、気を長く待っているよ。古海氏はこの旨を池田総理に面会して伝えたろうが、周恩来氏の希望はそう簡単には実現しなかった。10年後1972年の田中内閣で半分は実現したと言えるかもしれぬ。それからまた44年の歳月が流れている。

終戦から72年になる今、過去を知る人間は日中双方に殆どいなくなってしまった。互いの歴史認識のずれは大きく広がるばかりだ。どうすれば修復できるのだろう?

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